日頃から部下の育成に力を入れていらっしゃる所長先生方に向けて、今回は「叱る」というデリケートな、しかし重要なスキルについてお話ししたいと思います。
叱り方で変わる信頼関係
税理士事務所では、確定申告期の締切り間際のミスや、顧問先への対応の不備など、叱るべき場面に直面することがあります。
しかし、叱り方を誤ると、部下との信頼関係を損なう可能性があります。
効果的でない叱り方の特徴
よく見られる ineffective な叱り方には、以下のようなものがあります:
1. 感情的に声を荒げる
2. 威圧的な態度で接する
3. 一方的に説教する
これらの方法は、一時的には部下を従わせることができるかもしれません。
しかし、長期的には逆効果を生む可能性が高いのです。なぜでしょうか?
なぜ威圧的な叱り方は効果が低いのか
表面上は上下関係を確立できたように見えても、実際には以下のような副作用が生じます:
- 部下が表面的な同意をするだけで、本質的な理解に至らない
- 裏では不満や反発が蓄積される
- コミュニケーションが一方通行になり、重要な情報が上がってこなくなる
効果的な叱り方の難しさ
「叱る」というスキルは、一見シンプルに見えて実は非常に難しいものです。
その理由の一つが、「一回で納得させることの難しさ」にあります。
例えば、確定申告書のチェックミスが発生した場合、なぜそれが重大な問題なのか、どのような影響が生じるのか、そしてなぜそれを防ぐ必要があるのか—これらを一度の叱責で相手に深く理解させることは極めて困難です。
日頃からの積み重ねの重要性
効果的な叱り方の土台となるのは、実は日々のコミュニケーションにあります:
- 事務所としての品質へのこだわり
- 顧問先からの信頼を維持することの重要性
- 確認作業の意味
- チームワークの価値
このような仕事に対する基本的な考え方や軸を、日常的な業務の中で伝え続けることが重要です。
この積み重ねがあってこそ、叱る場面での説得力が生まれるのです。
特に重要なのは、上司としての一貫した軸を持ち、それを日常的に示していくことです。例えば:
- 「この事務所では顧問先の期限を絶対に守る」
- 「チェックリストの運用は必ず徹底する」
- 「報告・連絡・相談は些細なことでも欠かさない」
といった明確な方針を持ち、ぶれることなく実践している上司は、部下からの信頼を得やすいものです。
なぜなら、部下の側も:
- 「所長の言っていることには一貫性がある」
- 「確かにその考え方には納得できる部分が多い」
- 「この方針で進めば間違いない」
という認識を持つようになるからです。
このような信頼関係が築けていれば、叱る場面でも「また感情的に怒っているだけか」と軽視されることは少なくなります。
むしろ、「いつも筋の通った判断をする所長が指摘するのだから、本当に重要な問題なのだろう」という受け止め方をしてもらえる可能性が高くなります。
必要とされるスキル
効果的に叱るためには、以下のようなスキルも必要となります:
- 適切な語彙力:状況を正確に説明できる言葉の選択
- 論理的な説明力:問題点を筋道立てて説明する能力
- 感情のコントロール:冷静に状況を分析する力
- 相手の理解度を把握する力:腹落ちしているかどうかを見極める目
まとめ – 信頼関係を築く叱り方
効果的な叱り方の本質は、単なる叱責ではなく、部下の成長を支援することにあります。
これは決して簡単なスキルではありませんが、日々の積み重ねと意識的な実践を通じて、確実に向上させることができます。
特に、日頃からの仕事に対する考え方の共有や、部下とのコミュニケーションの質を高めることは、叱る場面での説得力を大きく左右します。
一朝一夕には身につかないからこそ、明日からでも意識して取り組んでいただければと思います。
そして最も重要なのは、この「叱る」というスキルを磨くことが、結果として事務所全体の品質向上と、より強固な信頼関係の構築につながるという点です。
皆様の日々の部下育成の取り組みが、必ず実を結ぶことを願っています。
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